「リピート」 乾くるみ 感想文

絶対に、本を読んでからこれを読んでください。100%ネタバレです。
読んだ人と一緒に「これすごかったよねぇ」と話す体で書いてますので、
読んでいないと、何を言っているのか不明だし(笑)。



昔々私が通っていた大学にシナリオ作成..みたいな内容の講義があった。私は理系の学生で他学科の講義だったが、ストーリーを作ると言うことに興味があったので面白半分で履修届を出した。私の考えたのはタイムトラベル物で、時間を飛び越えたが何か大きな力(自然淘汰的な何か?)に排除されてしまうというお話。しかしそこまでの発想(それだけの発想)。面白半分でそれほどの覚悟も無く受け始めた講義は、それから先のストーリーを詰めることもなく出席しなくなってしまった。
その時の答えがこれじゃないか!!ビックリ ふとした思い付きは一般ピープルの私にも浮かぶことがあるが、そこからここまでのストーリーを緻密に構築していく情熱が、二十歳の私には無かった。それを持っている人が作家になれるんだろうなぁ~。シミジミ
作家の発想のすごさに一番恐れ入ったのは、淘汰の理由付けである。排除されるのであるがその理由が「元は死んでるはずの人だった」と言う点。そうだよなぁ、理由が必要だよね。二十歳の時にそんな風に整理していったらよかったんだなぁ。シミジミ。でも「死んでるはずの人だった」なんて発想二十歳の私に浮かぶはずもない。それが浮かべば、リピートの常連と数名の同行者と言う設定が固まっていくんだろうなぁ。でもその一歩が出るかどうかが作家の価値なんだと思う。それに、常連を招待者だけでなく複数存在させるという案もすげぇなぁと感心する。読んでいて池田の存在は衝撃だった。招待者の中に常連が隠れているなんて、言われてみればあってもちっともおかしくないことなんだけど読んでる間は微塵も考えなかったもんなぁ。こういう騙された感って、ミステリィを読む醍醐味だよね。「騙してくれてありがとう」って感じ。「もっともっとどんでん返しをください」って感じで他の作品も読みたくなる。今どっぷりどんでん返しにハマっている。

<話が続くとしたら>
R11では毛利が初期事故でいないR10が繰り返される。R9から戻ってきた連中の内、毛利がいないぶん少しずつ違ってくるはず。順調なら風間と池田はまたR11に行くのだろうか?イヤ行った先はR12なんだけど、そんなことには気づきもしないだろう。R10で風間も池田も排除されたのだから、毛利がいないけれどR11でも同じように排除されてしまうだろうなぁ。そんな中、天童だけリピートを繰り返せるのだろうか?結局位置が分からずに天童もリピートできずに終わりそうだし、黒いオーロラに行く前に排除されるかもしれない。毛利がいない分、どんな展開もありそうだ。
いずれにしても、R0に近づけようとする何か大きな力(神?)が働き続けるのだろう…と言う私の解釈。

<290日>
生まれたばっかりの子供をリピートする想定から、戻る地点を決めていたなんて、深い。作家って言うのは、設定にこだわっていろいろ考えているんだなぁ。そうしないと良い作品にならないだろうなぁ。私にできるかしら(今からミステリィ書く気かwww)

<原田真二>
「うーう 時間旅行のツアーは いーかが いかがなもの」
このサビのフレーズが読んでてすぐに浮かんでくる人どのぐらいいるの?古い歌って、何年前の流行歌だよ。「歳いくつだこの作者?」と思って巻末を見ると、ふたつ違いだった(笑)。それならわかる。納得。

<最後の締めの展開は難しいよね>
基本的なスジっていうか流れは分かるのだけれど、そしていい感じの展開だと思うのだけれど、細かいところに突っ込みたくなるよね。でも裁判じゃないのだから、すべての事実を明確にする必要はない。それは読者が勝手に想像すれは良いことなので、勝手に疑問に思って勝手に答えを出す(笑)。

どうやって天童は池田を降ろすことができたのだろう?これは難しすぎ。池田が下りる理由が見つからない。でも、ヘリ内の二人の会話や銃撃戦になった経緯を細かく書いていたら、最後の10ページのクライマックスの盛り上がりのテンポが悪くなりそう。これはこれで端折っていいんだと思う...ことにする。

池田は時間前に入り口の位置を教えるだろうか?どうして天童の話に乗ったのだろう? 池田がヘリの操縦ができるのなら、天童を頼らなくてもひとりで行けるじゃん。でも、R10では免許がないからヘリを借りれないか。聞こえるわけがない状況だから「操縦できる」は毛利の想像かもしれない。

天童は何者?死体を一つ隠したり、ピストルを入手出来たり、ちょっと普通じゃないよね。小説なんだから普通じゃない人がいてもいいじゃん。そこに文句言わないでよ。説明が足りないって?本筋じゃないから省略でいいんだよ。

やっぱタイムトラベル物をすっきり書くのは難しいよなぁ。二十歳の私が挫折するのも無理もない(笑)。乾様、こんな素敵な解答例を読ませていただきありがとうございました。

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